希学園のジレンマ

2009年度春の中学入試において、灘中学校に合格した奈良県の子供は6人。そのうちの3人が希学園の生徒だそうですが、その奈良県に希学園は2008年10月、近鉄学園前教室を開校しました。奈良県の教室は初めてでこれで豊中、奈良と進出したい地域には新たに教室を設置し、関西圏で大阪5教室、兵庫2教室、京都1教室、奈良1教室の計9教室となりました。

希学園としては、教室を多数展開するのではなく、あくまでも都市部に拠点教室を設置し、地域の生徒を一か所に集める展開でしょう。

拠点にきちんと展開している希学園ですが、中学受験専門塾はこれから非常に厳しい戦いを迫られることになります。といいますのも、圧倒的な少子化、および高校入試予備軍である中学生が「高校入試全入時代」を迎えて塾離れを起こしています。

つまり、少子化の打撃に加えて子供の塾離れによる生徒数減少の時代を迎えており、各塾による「少なくなった生徒」の奪い合いが起こっています。その奪い合いは、少子化によって以前よりも小さくなったパイの奪い合い。当然ながら競争は熾烈を極めます。

そのことによって何が起こったか?

「夏期講習の講座選び」についての相談

塾の先生から親は勉強を見ないようにと注意された

大手学習塾の中学受験への本格的な参戦です。これまでも大手塾は中学受験対象のクラスは設置していましたが、特に高校入試をメインとする大手塾は、中学生の塾離れが深刻になってきたことで、こぞって中学受験に本気で参入してきています。

この影響を希学園のような「中学受験専門塾」はまともに影響を受けるでしょう。中学入試の受験者は不況とはいえ、増加傾向にあり、かつ授業や特訓講座などの授業料は高額です。つまり、塾にとって「お金がとれる層」が中学受験を目指す層には多いということです。

現に中学入試において、ダブルスクール、いわゆる「集団授業塾+個別指導塾(または家庭教師)」を受講する子供は多くなってきており、月謝が10万円を超える家庭も都市部で珍しくありません。

こうした「富裕層」が多く存在する「中学受験クラス」は少子化&塾離れで業績が悪化している塾にとっては垂涎の的。ゆえに本格参戦しての生徒の奪い合いが激しくなっているのです。

これまで合格実績でも指導でも一定の実績を出していた希学園でもその影響は免れません。今まで希学園に来ていた層が一定の割合で他塾に奪われるという現状がそこにあるからです。希学園が以前よりも悪くなったわけでもないのに、なにもしなければ競争の激化により、一定数の流出が避けられなくなっているのです。

それによって中学受験クラスで何が起こったかというと、中学入試の小学校低学年化です。

希学園をはじめ、中学受験塾は軒並み小学校低学年のクラス設置を行っています。希学園では小学校2年生からのクラス設置になっていますが、すでに小学校1年生からクラスがある学習塾がほとんどです。

おそらくこれからはどの塾も中学受験は小学校低学年からというキャッチフレーズを使うようになるでしょう。悪く言えば「中学受験の低学年化をあおる」可能性も否定できません。それは中学受験の内容が変わったのではなく、中学受験を取り巻く学習塾の環境が変わったということ。

ただ中学受験の低学年化によって中学入試まで6年におよぶカリキュラムというのは、誠に難しいと思われます。6年間、好奇心を持ち続け、塾慣れなどせずに最後まで塾に熱心に通うというのはなかなか難しいことなのです。

どういうことかといいますと、通常、カリスマ講師や人気講師は大手塾でも数えるほどしかいないものです。各塾とも講師のレベルを上げるべく試みていますが、天性の資質を持った人気講師がゴロゴロいる学習塾などありません。

となると自然と、人気講師・カリスマ講師は受験学年に当たるようになる。受け持ったとしても受験が近い5年生・6年生まで。しかし、クラスは小学校低学年から募集してある。そうすると経験の浅い講師や学生アルバイト講師が小学校4年生以下を受け持つようになります。

ここで問題が起きます。

先ほどから書いているように中学受験のクラスは軒並み低学年化しています。つまりクラス・授業のコマ数は増えているわけです。しかし、主力講師は受験学年しかコマ数の関係で持てないとすれば、小学校低学年は主力講師が見られなくなってしまう。

しかし、低学年から塾に通わせようとする家庭は総じて意識は高い。意識が高いゆえに小学校低学年から主力講師による指導を臨む人は多い。

ここに学習塾の矛盾・ジレンマが生じるわけです。

希学園では、そのことも頭にあるのでしょう。

「希学園の小3は2009年度も最強の講師陣で指導します!」

と題して、

希学園学園長 前田卓郎
希学園副学園長 入江 一郎
希学園灘コース責任者 黒田 耕平

の主力カリスマ講師をそ小3クラスでれぞれ、

前田⇒ 大阪豊中教室「小3ベーシック算数」・谷九教室「小3最高レベル演習算数」
入江⇒ 京都四条烏丸教室「小3最高レベル演習算数」
黒田⇒ 兵庫西宮北口教室「小3最高レベル演習算数」

と配置しています。

希学園が行っている配慮は素晴らしいのですが、それでも、関西9教室のうち、4教室の4コマしかカリスマ講師は小学校3年生を担当できないわけです。これに小4があり、受験学年の小5・小6となれば、いくら身体があっても足りないということになります。

一番最初に希学園は拠点教室スタイルを取っているといったのはそのためです。これは実質的にそうならざるを得ないということなのです。

こうして小学校低学年から子供たちを鍛え上げ、実力をつけさせ、なおかつ無事受験学年まで自塾で持ち上げていくのは並大抵の努力ではありません。文字通り血のにじむような努力といえます。

学習塾の合併や再編の問題が起こっているのはそれぞれの塾の事情だけでなく、学習塾が抱える構造的な問題なのです。

中学受験を考える際には、こうした事情も鑑みて、しっかりと情報収集をして臨む儀つようがあると思います。


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